これは、「
FOSS4G Advent Calendar 2016」の12日目の記事です。
昨年に引き続き、電子海図のネタです。
昨年の記事はこちら。
昨年は、「航海用電子海図(ENC)」とは何か、どこで入手できるのか、どうやって見るのか、という話をしました。今年は、OpenCPNというソフトウェアを使ってENCを見る方法に触れていきます。
OpenCPNとは?
昨年も少しだけ触れたのですが、OpenCPNは、ENCを表示する専用のオープンソースソフトウェアです。S-52という、IHOが定めたENCの表示仕様に従っているため、船に搭載されているENC表示装置(ECDIS)とほぼ同じ見た目でENCが表示されます。また、通常、ENCは専用の表示装置やソフトウェアでないと使用できないよう、S-63という仕様に基づいた特殊な暗号化がなされていますが、OpenCPNでは、S-63のENCも表示させることができます。
ほかにも、GPSと接続して現在地を表示したり、AIS(船舶自動識別装置)と接続して周囲にいる船の位置を表示したり、といった機能がついているのですが、この記事では扱いません。
インストール
OpenCPNのサイトにアクセスし、"Download"のタブから、最新のバージョンをダウンロードします。あとは、インストーラーの指示に従ってインストールします。
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OpenCPNのウェブサイト |
ENCのダウンロード
今回も、無料で簡単に手に入るアメリカのENCを使うことにします。
NOAAのENCダウンロードサイトから、必要なファイルをダウンロードします。このサイトでは、州ごとや海域ごとのENCがzipファイルでまとめられています。今回は、そのうちハワイ州のものを使います。
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ENCダウンロードサイト |
ダウンロードしたzipファイルを展開し、ENC_ROOTフォルダー以下を任意の場所に置いておきます。
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zipファイルを展開したところ |
OpenCPNの起動
OpenCPNを起動すると、最初に注意喚起のダイアログが出てきます。要するに、「必ず紙海図などと併用して使ってね」ということです。
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注意書き |
その後、アメリカの東海岸あたりの地図っぽいものが出てきます。当然ですが、この時点では、まだENCは読み込まれていません。
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OpenCPNを起動したところ |
ENCの表示
画面左上にあるツールバーから、スパナの絵のボタン(Option)をクリックします。
"Options"ダイアログにて、"Charts"を選択し、"Add Directory"をクリックして、先ほど展開したENC_ROOTフォルダーを指定します。
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オプション設定画面 |
"OK"を押してダイアログを閉じます。この状態で、マウスドラッグなどで地図をハワイあたりまで動かすと、ENCが表示されるようになります。画面右上の"Meters"は、水深などの数値の単位がメートルであることを示します。
このままではわかりづらいですが、ズームインしていくと、より細かい海図が表示されるようになります(ENCは縮尺に応じて最大5段階のデータが存在します)。
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ワイキキビーチ付近の海図(オプションで水深表示も有効にしています) |
Android版を試す
OpenCPNにはAndroid版があるようなので(昨年はなかったので最近できたのでしょう)、こちらも試してみます。インストール自体は難しいことはなく、Google Playで"opencpn"で検索してヒットしたOpenCPNアプリをインストールすればOKです(無料版と有料版の2種類あるようなので注意)。
なお、ENCのファイルはあらかじめAndroid上に置いておきます(今回はSDカードの中に入れました)。
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OpenCPNアプリのインストール |
起動すると、先ほどと同じ警告の後、このように地図が表示されます(ちょっと陸地が欠けているような…)。
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起動したところ |
で、画面左上のスパナのボタンをタップし、先ほどと同じ要領でENC_ROOTのフォルダーを指定すると、海図が表示されるようになります。
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ENCのデータが表示された |
3年前のスマートフォンでも割とさっくり動きます。設定画面などのUIがかなり操作しづらいのが難点ですが、ここが改善されれば、かなり使えるのではないかと。
今回はここまでなのですが、最後に…
そういえば海図のオープンデータ化はどうなっているのか?
平成27年12月4日の「
第11回電子行政オープンデータ実務者会議」にて、海図のオープンデータ化についての話が出てきました。その後の動きとして、平成28年4月5日に「
電子行政オープンデータ実務者会議 第4回公開支援ワーキンググループ 及び 第4回利活用推進ワーキンググループ 合同会合」が開かれ、海図に関しても触れられたようですが、法律も絡んできますし、海図には安全にかかわる重要な情報が含まれているため、どうも公開には慎重になっているような印象を受けました。まだまだ道のりは遠いかも…。