2016年12月12日月曜日

FOSS4Gで電子海図の世界をのぞく2016 - OpenCPNで電子海図を見る

これは、「FOSS4G Advent Calendar 2016」の12日目の記事です。

昨年に引き続き、電子海図のネタです。昨年の記事はこちら
昨年は、「航海用電子海図(ENC)」とは何か、どこで入手できるのか、どうやって見るのか、という話をしました。今年は、OpenCPNというソフトウェアを使ってENCを見る方法に触れていきます。

OpenCPNとは?


昨年も少しだけ触れたのですが、OpenCPNは、ENCを表示する専用のオープンソースソフトウェアです。S-52という、IHOが定めたENCの表示仕様に従っているため、船に搭載されているENC表示装置(ECDIS)とほぼ同じ見た目でENCが表示されます。また、通常、ENCは専用の表示装置やソフトウェアでないと使用できないよう、S-63という仕様に基づいた特殊な暗号化がなされていますが、OpenCPNでは、S-63のENCも表示させることができます。

ほかにも、GPSと接続して現在地を表示したり、AIS(船舶自動識別装置)と接続して周囲にいる船の位置を表示したり、といった機能がついているのですが、この記事では扱いません。

インストール


OpenCPNのサイトにアクセスし、"Download"のタブから、最新のバージョンをダウンロードします。あとは、インストーラーの指示に従ってインストールします。
OpenCPNのウェブサイト

ENCのダウンロード


今回も、無料で簡単に手に入るアメリカのENCを使うことにします。
NOAAのENCダウンロードサイトから、必要なファイルをダウンロードします。このサイトでは、州ごとや海域ごとのENCがzipファイルでまとめられています。今回は、そのうちハワイ州のものを使います。
ENCダウンロードサイト
ダウンロードしたzipファイルを展開し、ENC_ROOTフォルダー以下を任意の場所に置いておきます。
zipファイルを展開したところ

OpenCPNの起動


OpenCPNを起動すると、最初に注意喚起のダイアログが出てきます。要するに、「必ず紙海図などと併用して使ってね」ということです。
注意書き
その後、アメリカの東海岸あたりの地図っぽいものが出てきます。当然ですが、この時点では、まだENCは読み込まれていません。
OpenCPNを起動したところ

ENCの表示


画面左上にあるツールバーから、スパナの絵のボタン(Option)をクリックします。

"Options"ダイアログにて、"Charts"を選択し、"Add Directory"をクリックして、先ほど展開したENC_ROOTフォルダーを指定します。
オプション設定画面
"OK"を押してダイアログを閉じます。この状態で、マウスドラッグなどで地図をハワイあたりまで動かすと、ENCが表示されるようになります。画面右上の"Meters"は、水深などの数値の単位がメートルであることを示します。

このままではわかりづらいですが、ズームインしていくと、より細かい海図が表示されるようになります(ENCは縮尺に応じて最大5段階のデータが存在します)。
ワイキキビーチ付近の海図(オプションで水深表示も有効にしています)

Android版を試す


OpenCPNにはAndroid版があるようなので(昨年はなかったので最近できたのでしょう)、こちらも試してみます。インストール自体は難しいことはなく、Google Playで"opencpn"で検索してヒットしたOpenCPNアプリをインストールすればOKです(無料版と有料版の2種類あるようなので注意)。
なお、ENCのファイルはあらかじめAndroid上に置いておきます(今回はSDカードの中に入れました)。

OpenCPNアプリのインストール

起動すると、先ほどと同じ警告の後、このように地図が表示されます(ちょっと陸地が欠けているような…)。
起動したところ

で、画面左上のスパナのボタンをタップし、先ほどと同じ要領でENC_ROOTのフォルダーを指定すると、海図が表示されるようになります。
ENCのデータが表示された
3年前のスマートフォンでも割とさっくり動きます。設定画面などのUIがかなり操作しづらいのが難点ですが、ここが改善されれば、かなり使えるのではないかと。


今回はここまでなのですが、最後に…

そういえば海図のオープンデータ化はどうなっているのか?


平成27年12月4日の「第11回電子行政オープンデータ実務者会議」にて、海図のオープンデータ化についての話が出てきました。その後の動きとして、平成28年4月5日に「電子行政オープンデータ実務者会議 第4回公開支援ワーキンググループ 及び 第4回利活用推進ワーキンググループ 合同会合」が開かれ、海図に関しても触れられたようですが、法律も絡んできますし、海図には安全にかかわる重要な情報が含まれているため、どうも公開には慎重になっているような印象を受けました。まだまだ道のりは遠いかも…。

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